目次
1.特許出願
1.1.準備書類
2.中間手続き
2.1.選択要求/限定要求
2.2.拒絶
2.3.IDS
3.特許登録及び維持
4.特許庁料金
米国に特許出願するには、基本的に下記の書類を用意する必要あり。
・英語の明細書、クレーム、要約
・図面(図中に文字がある場合は英語にしたもの)
・委任状
・譲渡証書
・宣誓書
・従来技術(IDS)
<英語の明細書等>
通常、日本での特許出願の翻訳文を作成する。ただし、米国の様式に合わせる必要がある。
長文の回避、構成要素の明確化、作用的記載の構造的記載への変更等。
多数項従属クレームを単一クレームに従属させる。
<図面>
日本での特許出願の図面を流用できる。ただし、図番やページ番号の英語への変更、並びに従来例の図面に「Related Art」や「Prior Art」の文字を記載。
<委任状>
出願人(会社の責任者又は発明者)がサインしたもの。会社の責任者は、代表者に限られず、知財部門のトップ等の権限のある者であればよい。原本を提出する必要がないため、スキャンしたデータを包括委任状のように使いまわすことが可能。
<譲渡証書>
発明者がサインしたもの。出願人が会社の場合等に発明者から出願人に発明を譲渡するために必要になる。
<宣誓書>
発明者がサインしたもの。特許出願が発明者又は権限を授与した者によってなされた旨、及び発明者自身が最先の発明者であると信じる旨の宣誓。
<従来技術>
出願人が知っている従来技術の開示義務を果たすために、情報開示陳述書(IDS)の提出用の従来技術及びその英訳を用意する。
<限定要求>
複数の区別可能な発明が含まれる場合、審査対象となる発明を出願人に選択させるもの。選択された発明に関するクレームについて審査が進められ、選択されていない発明に関するクレームは審査対象から除外される。
例えば、区別可能な装置と方法が含まれている場合に、出願人は装置か方法かを選択させる。「区別可能な」とは、その方法がその装置以外でも利用可能な場合や、その装置がその方法以外にも利用可能な場合等をいう。
<選択要求>
複数の種(例えば実施例や変形例等)に共通するクレームを含む場合に、審査対象となる種を出願人に選択させるもの。選択された種に関するクレームについて審査が進められ、選択されていない種に関するクレームは審査対象から除外される。
<反論>
限定要求は、「複数の区別可能な発明が含まれ」「審査官の過大な負担となる場合」が対象となるため、@区別可能ではないこと、又はA審査官の過大な負担とはならないことを主張する。
選択要求は、審査官の誤りを指摘して主張を行う。
ただし、基本的には反論しない方が良い。
<分割出願>
審査対象から除外されたクレーム(withdrawnクレーム)は、特許査定時に復活(rejoinder)することがある。復活しないクレームについては、分割出願で権利化可能。
拒絶理由通知の種類
・ノンファイナルオフィスアクション(以下、OA)
・ファイナルオフィスアクション(以下、FOA)
<OA>
拒絶理由を通知する書面であって、最初に発行されるもの、又は新たな拒絶理由が発見された場合に発行されるもの。「新たな拒絶理由」は、出願人の行った補正に基づかないもの、又は所定期間内に提出されたIDSの先行技術に基づくもの。
<FOA>
2回目以降に発行されるもの(上記のOAを除く)。
対応方法
<時期>
OAの発送日から3か月以内(最大3か月まで延長可)。
<手続き>
補正及び/又は反論
補正可能な範囲はOAとFOAとで異なる点に注意が必要
<OA>
明細書及び図面に開示された範囲で比較的自由に補正できる。
<FOA>
従属クレームの内容を独立クレームに加える程度の補正しかできない。補正可能な範囲を超えた場合は、アドバイザリーアクションが発行される。アドバイザリーアクションに対しては、RCE(Request
for Continued Examination)を行うか、AFCP2.0(After Final Consideration Pilot
2.0)の申請をする必要あり。
<RCE>
RCEは、出願を再度審査に継続させるためのもの。ファイナルOAの後は、限られた範囲でしか補正することができないが、RCEを行うことでFOAの補正の制限を超える補正を行って再度審査官に審査を行ってもらうことが可能。
<AFCP2.0>
AFCP2.0を申請することにより、FOAの制限を超える補正について、所定時間 (3時間)だけ審査官に審査をしてもらうことが可能。補正の文字数が5文字以内(5文字を越えてもできるだけ少ない文字数)だと認められる可能性が高い。補正が認められずにアドバイザリーアクションが発行されることが少なくなく、延長費用やインタビュー費用がかかるため、限定的な利用になる印象。
主な拒絶理由の内容と対応
<新規性102条>
内容:引用文献に記載された発明と同一であること。
対応:同一ではないように補正する。引用文献が最も広い合理的解釈がなされることに注意が必要。一見、同一ではないようでも、同一の可能性がある。
<非自明性(進歩性)103条>
内容:引用文献に記載された発明とは相違点があるが、相違点について同一又は他の引用文献に開示や示唆があるか技術常識であること。
対応:引用文献には開示や示唆の無い構成を追加するのが一般的。単なる設計変更とはならないように注意する。その他、機能の違いや引用文献の組み合わせの阻害要因等について主張するのも手。日本での対応のように機能、作用、効果等を主張しすぎないように注意が必要。
<特許適格性(プログラム関連)101条>
内容:プログラムの特許やビジネスモデル特許は、Alice判決以降、抽象的アイデア等として拒絶される。
対応:抽象的アイデア等を実用的な応用(practical application)へと組み込む追加の要素をクレームに追加するか、抽象的アイデア等を顕著に超える(significantly
more)ように補正する。
例えば、単一プロセッサでの処理にとどまらず、複数のプロセッサ同士が協働するように補正したり、プロセッサが具体的な機能を有するように補正する。
<時期>
(1)最初のOA前、又は出願日から3か月以内の何れか遅い方
(2)最初のOA後又は出願日から3か月経過後の何れか遅い方から審査が終了するまで
(3)審査終了後、特許発行料の支払いまで
(4)特許発行料の支払い後、特許発行まで
<手続き>
IDSの時期に応じた必要書類の提出
時期(1):従来技術の文献を記載したIDS
時期(2):IDS+陳述書or手数料
時期(3):IDS+陳述書+手数料
時期(4):IDS+RCE+QPIDSの申請
<陳述書>
3か月以内に発行された米国以外の対応外国出願のOA等に記載された文献であること、又は3か月以内に出願人が知った文献であることの陳述書。(2)の場合、陳述書を提出すれば、手数料は不要。
<QPIDS>
QPIDSを利用することにより、審査再開不要な場合は、RCE費用が返還される。
特許登録
特許査定後、所定期間内に特許発行料を納付することで特許登録。
特許の維持
下記の期限までに年金を納付することで特許権の維持が可能
・3.5年目
・7.5年目
・11.5年目
<3.5年目>
特許の登録日から3年〜3.5年までに支払う。6か月の猶予期間があるが年金額が1.5倍になる。猶予期間は7.5年目及び11.5年目も同様。
<7.5年目>
特許の登録日から7年〜7.5年までに支払う。
<11.5年目>
特許の登録日から11年〜11.5年までに支払う。
代表的な特許庁手数料は下記表の通り。
スモールエンティティ(Small Entity)に該当すると1/2に、マイクロエンティティ(Micro Entity)に該当すると1/4にそれぞれ減額。
<スモールエンティティ>
・個人事業または従業員が500人以下の中小企業
<マイクロエンティティ>
・スモールエンティティに該当
・過去に米国で4件を超えて出願していないこと
・出願人または発明者の双方の前年総所得が米国の平均世帯年収の3倍(例:$189,537/2020年9月)を超えないこと
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Large Entity |
Small Entity |
Micro Entity |
出願時 |
出願料 |
特許出願 |
300 |
150 |
75 |
サーチ料 |
660 |
330 |
165 |
審査料 |
760 |
380 |
190 |
加算料 |
独立クレーム4つ目以降 |
460 |
230 |
115 |
クレーム21つ目以降 |
100 |
50 |
25 |
多数項従属クレーム |
820 |
410 |
205 |
100頁を超える50頁ごと |
400 |
200 |
100 |
中間時 |
延長料 |
1か月 |
200 |
100 |
50 |
2か月 |
600 |
300 |
150 |
3か月 |
1400 |
700 |
350 |
RCE料 |
1回目 |
1300 |
650 |
325 |
2回目以降 |
1900 |
950 |
475 |
登録時以後 |
登録料 |
発行料 |
1000 |
500 |
250 |
公告料 |
300 |
年金 |
3.5年目 |
1600 |
800 |
400 |
7.5年目 |
3600 |
1800 |
900 |
11.5年目 |
7400 |
3700 |
1850 |